No. 85: ぼくらのまちの やさしさ チェック!

◆ 校種 ◆
小学校
◆ 教科 ◆
総合的な学習の時間
◆ 学年 ◆
5,6年
◆ 時間数 ◆
14時間
◆ 教科書 ◆
なし

授業の概要
身近な郵便局をきっかけにして、ユニバーサルデザインについて考え、自分たちのまちは、だれにとっても優しいかを調べる活動である。調べる過程で、世の中には様々な立場の人が暮らしていることやユニバーサルデザインが広がってきた背景に気づいたり、社会の中の一員として自分のできることを考えたり、「だれにとっても暮らしやすいやさしいまちづくり」の大切さについて考えを深めることができる。

教科の目標
・身近な生活の中から課題を考えることができる。
・目的を考え、インタビュー・体験活動・本・インターネットなどを利用して必要な情報を集めることができる。
・ 集めた情報を活用しやすいように整理し、必要なものを判断して使っていこうとする。
・伝えたいことを明確にして、相手に分かるようにまとめたり、伝えたりすることができる。

情報教育目標リスト(2011年版)
 ◆A51a3-030: 見通しを持って、調べる計画を立て、手順を整理する〔行動〕
 ◆A51b3-070: 集めた情報の中で、どれが課題解決に使えそうかがわかる〔判断〕
 ◆A51c3-040: 事実と自分の考えを、区別して発表する〔行動〕
 ◆C22-3-060: ユニバーサルデザインの考え方を知る〔認識〕

学習の流れ

写真1【学区内の道路が車椅子の方にとってやさしいかどうかをチェック】

写真2【視覚障害者にとってのやさしさをチェック】

写真3【郵便ポストの高さを小さい子供の立場に立ってやさしいかどうかチェック】

写真4【高齢者の立場で調べて分かったことを発表】

STEP1
(1)郵便局のスロープの拡大写真を見て、だれのために作られたものか話し合う。(0・5時間)
(2)郵便局に出かけ、スロープのような「優しいもの」は他にないか探す。(1時間)
導入でスロープの写真を提示し、ユニバーサルデザインへ意識を向けさせるようにする。
「先生のようにみんなにも郵便局の優しさが見つけられるかな?」と投げかけて、郵便局にいく意欲を高めるとよい。
デジカメ、優しさ発見カードを用意しておく

反応例)
(1)車椅子の人や足の不自由な人のためにある。
(2)点字ブロック、車椅子用駐車スペース、高さの低いカウンター、郵便局の人の優しさ

STEP2
(1)郵便局で見つけた「優しいもの」を紹介し合う。
(2)なぜ、郵便局には、「優しいもの」がいっぱいあるのか話し合う。
写真【郵便ポストの高さを小さい子供の立場に立ってやさしいかどうかチェック】
・ 施設だけでなく、人の優しさにも目を向けている子の発見を意図的に紹介する。 
デジカメの写真を提示できるよう、プロジェクターなどを準備する。

反応例)
(2)障害がある人も、一人で郵便局に来られるように/どんな人が来てもいいように

STEP3
(1)郵便局は優しかったけど、まちの中は、どうなのか話し合ってみよう。(0.5時間)
(2)どうやって、優しさチェックをすればよいか話し合う。(0.5時間)
(3)立場を選んだり、調べる方法を選んだりして、調べる計画を立てる。(1時間)
写真【学区内の道路が車椅子の方にとってやさしいかどうかをチェック】
子どもの視点をまちへ広げ、「まちの中は、どのくらいみんなに優しいのか」を調べようとする意欲を引き出す。見通しを持って学習に取り組めるようにチェック方法を出し合っておく。学習が円滑に進むよう、学習の進め方や必要な道具・機器・資料などを計画表に書き出すように指示する。(「やさしさチェック報告会」の計画も入れておくようにする)

計画内容例)
目の不自由な人の立場でまちを歩行し。チェックしたい。(その他:耳が不自由、車椅子利用、小さな子、妊婦、高齢者など)
・障害のある人にインタビューして、気持ちを聞いてチェックしたい。
・本やインターネットなどで他地域の情報を集め比べてみたい。
写真【視覚障害者にとってのやさしさをチェック】

STEP4
まちのやさしさチェックをしよう(例)
・点字ブロックや音響信号などの優しさを感じさせる施設などを探す。
・優しい施設や場所について、アイマスクなどで体験する。
・インタビュー・本・インターネットなどで視覚障害の人にとってのまちの優しさについての情報を集める。
写真【高齢者の立場で調べて分かったことを発表】
・集めた情報や体験活動の記録をメモしたり、デジタルカメラやテープレコーダーなどの機器を活用して残したりするようにさせる。
・アイマスク体験や車椅子体験を行う場合、安全面で配慮が必要。
・障害のある人との接点として、市の障害福祉課や社会協議会・ボランティア団体などに協力を依頼するとよい。

【活動例】・・視覚障害のある人の立場になって調べる場合
(1)点字ブロックや音響信号などの施設を探しにいく。(2時間)
(2)優しい施設や場所をアイマスク体験で調査する。(2時間)
(3)インタビュー・本・インターネットなどで視覚障害の人にとってのまちの優しさについての情報を集める。

STEP5
集めた情報を整理し、「やさしさチェック報告会」で伝えることをまとめる。
・集めた情報を整理、分析し、まちが優しかったといえるかどうかについて自分の考えをはっきりさせるようにする。自分の考えを分かりやすく伝えるために、まとめ方を工夫して、資料の準備をするようにさせる。(見つけた施設なら、デジタルカメラの映像でとか、アンケート結果なら表やグラフにまとめてなど)

例)郵便局のように優しい施設を見つけたから、まちは、優しいと伝えたい。だから、その施設の写真を使って、自分の考えを伝えよう。

STEP6
やさしさチェックの結果を報告しあう。
例)この写真の施設のようなバリアフリー施設を〇件見つけたので、まちは優しいと思う。
〇さんにインタビューしたときの声を聞いてください。障害があるからと、変な目で見る人がいるから、まちに出かけるのがいやだと話しています。これでは、まちは優しくない。
ここでは、心の面の優しさについての主張を持っている子をうまく生かし、施設面でのユニバーサルデザインとともに、人の心の優しさが大切であることも感じさせて、優しいまちづくりに向け、どんな気持ちで生活したらよいか考えさせたい。
・報告会後に「まちの優しさチェック報告書」を作って、地域に発信する活動へと発展させることもできる。

その他の報告例)
*このホームページで、ユニバーサルデザインという考え方が出てきて、だれにでも使いやすいものやまちを作ろうとする人が増えてきたことがわかった。だから、まちは、優しいと思う。
*アンケートの結果では、みんなの心が優しければ施設とかがなくてもまちは優しいと答えている人が多いので、心の持ち方しだいだと思う。

まとめ
まちのやさしさについて集めた情報を根拠として、説得力のある意見を出し合うようにさせる。
また、心の面の優しさについての主張を持っている子をうまく生かし、施設面でのユニバーサルデザインとともに、人の心の優しさが大切であることも感じさせて、優しいまちづくりに向け、どんな気持ちで生活したらよいか考えさせる。

実践のポイント
○導入で郵便局を扱っているが、ユニバーサルデザインを意識した適当な施設があれば、変更して取り組んでもよい。
○個人・グループ・一斉のどの形態で行うか実態により、選ぶとよい。
○「優しさチェック報告会」は、ディベート、意見交換会などに置き換えての展開も考えられる。
○障害のある方に接触するときは、プライバシーの面での配慮が必要。特に写真撮影については、細心の注意を払うようにする。